トレイルランやウルトラライトハイキングに興味ある方ならば一度は聞いたことがある、もしくはロゴを見たことがあるかもしれない、富山県のランニング・トレイルランニング専門店「 SALLYS RUNNING DEPT. 」のご紹介です。
今回は店長の藤森 暁さんにインタビュー。お店を開くまでの経緯や、お店のこだわりなどについて伺いました。
▼店長の藤森さんとご飯を食べた話をポッドキャストに収めました。よろしければこちらもどうぞ!
■目次
使いやすいボトルを作りたいという思いから商品開発をスタート
ーまずはお店の概要を教えてください。
富山県高岡市で、ランニングとトレイルランニングのショップ「SALLYS RUNNING DEPT.」を運営しています。2019年9月に創業して、今年で3年目になります。ランニンググッズといえば大型スポーツ店で買うイメージがあると思いますが、海外では地域性のあるローカル店が多くあるんです。
また、日本ではスケボーショップやレコード屋さん、登山道具のお店だと小さい規模でもファンがついているというイメージがあったので、ランニング領域でも同様にできるのでないかと考えました。
ー藤森さん自身もずっとランニングを続けているのですか?
スポーツは子どもの頃から好きで、ランニングは始めて10年くらいになります。ランニングなら自分の好きなときにできますし、良い気分転換やストレス発散になるので、どんどんのめり込んでいきました。団体種目は人数が集まらないと成り立たないですが、ランニングなら一人で空いた時間に取り組めるという理由で始める方は多いですね。
ー趣味だったランニングを仕事にしようと思ったのはなぜでしょう。
ランニング中の水分補給に携帯するボトルが、使いづらいなと感じていたのが始まりです。ポケットにも入らないし、都度バッグに入れて走るのも面倒なので、もっと気軽に水分を携帯できたらいいのにと思っていたんです。
また、前職で食品包装に使われるフィルムなどのプラスチックを扱うパッケージ会社に勤めていた経緯もあって、使いやすいものを自分で作る商品開発に興味が沸きました。そこでサラリーマン時代に開発したのが、シェイクハンズです。
ーシェイクハンズって藤森さん発祥だったんですね!どのように開発したのか知りたいです。
シェイクハンズの開発前に使っていた海外製のボトルも画期的ではあったのですが、水が漏れてしまったり飲み口が硬かったりと、使い勝手がよくない部分も結構あったんですね。なので、現状のボトルを分解して改善しつつ、設計していきました。
ーシェイクハンズは特殊な形状なのが印象的です。
海外製品は手が大きくないと日本人には握りにくい場合もあるのですが、シェイクハンズは女性でもしっかり握れる設計になっています。また材質も医療品と同等グレードのプラスチックを使っているので、衛生面も問題なく、安心して使えると思います。
ー実は前職の経験も役に立っているんですね。
ランニングに限らない商品ラインナップで、幅広い趣味を持った人が集まるお店に
ーシェイクハンズを作ってからお店をオープンするまでの流れを教えてください。
シェイクハンズを作ったあとは、会社の仕事の合間に営業したり大会の会場に足を運んで選手に渡したりして、趣味がもうひとつの仕事になりつつありました。そんなときに、「店舗を構えれば、もっと使ってくれるお客様や選手の声を取り入れたものづくりができるようになるのではないか」と思うようになったんです。
ー藤森さん自身もランニングを長年続けているので、選手やお客様のニーズを汲み取ったものづくりができそうです。
大手の企業だと商品開発会議の中で案が否定されてしまったり、売れる商品に方向転換をせざるを得なくなってしまったりすることもあると思います。その点、私は一人で始めたので、自分が本当に良いと思う商品を作ることができたのはよかったと思います。
ーひとりだったからこそ自分の求めるものを追求できて、その結果多くの人のニーズにも答えられたと。お店には仕入れ商品もあると思いますが、仕入れる際の基準は設けていますか?
仕入れる商品も、自分が使いたいと思えるかを判断基準にしています。万人受けしそうなものよりも、作り手の想いが伝わるものを選んでいますね。逆に自分が良いと思えば、スマホスタンドや醤油といったランニンググッズ以外のものも並べています。
ー醤油まで販売しているんですか!?
スマホスタンドも醤油も、お客様が製造しているものです。例えば醤油は地域でも愛されている銘柄で、これ1本から広がる話もありますよ。
ー商品がコミュニケーションのきっかけのひとつにもなっているんですね。お店にはどのようなお客様が来られますか?
ランニングショップというと、マラソンや陸上のプロフェッショナルな方々がいるイメージがあるかもしれませんが、意外とプロの人は少ないです。ランニングが好きだけど、登山や自転車も好きというような方が来られますね。アウトドアな趣味だけではなく、クラフトビールなどのお酒や音楽など幅広い趣味を持った方が集まっています。
ーランニンググッズ以外も並べることで、お客様の興味関心も広がる良い循環が生まれそうですね。何がきっかけでみなさん来店されるのでしょうか?
広告も出していないので、おそらく友達の紹介やSNS経由だと思います。特に山だとウェアが目立つので、うちのウェアを着て走ってくださってる方を他のランナーの方が見て、お店を知ってくださったという話はよく聞きます。
ーお客さんが広告の役目も果たしていますね。ちなみに「 SALLYS RUNNING DEPT. 」という名前の由来はありますか?
お店を構える前に、アメリカのランニング文化が根付いている手がかりを探るために渡米したんです。ランニングショップを周っていると、人の名前がついているお店が多いことに気づきました。人名を名付けることで親しみやすいのかなと思い、「 SALLYS RUNNING DEPT. 」と名付けました。
ーロゴのキャラクターは、サリーちゃんということですね。親しみやすいデザインでとても可愛いです。
お店のロゴは、白根ゆたんぽさんというイラストレーターの方に依頼しました。いちファンとして特に面識はなかった方なのですが、お店に対する熱い想いを伝えたら快く引き受けてくださりました。ゆたんぽさんの可愛らしいロゴを掲げることで、ゆたんぽさんのファンの方をはじめとする幅広い方にランニングを好きになるきっかけが作れたらという思いもあり、依頼させてもらいました。
シェイクハンズの営業で台湾に行ったときに、ゆたんぽさんもちょうど台湾でイベントに出展していたので、ちょうどお会いできたのは嬉しかったです。
積極的なイベント開催で、人との出会いを大事に
ー店舗でアイテムを販売するだけでなく、イベントも定期的に開催していますよね。
20名くらいで一緒に走るグループランを毎週木曜日の夜に開催しています。元々お店を始める何年も前から開催していたのですが、今はお店に来てもらうきっかけや、ランニングに興味のある方の始めるきっかけ作りにもなっています。メインの参加者は富山の方々ですが、観光客の方がランニングショップを検索して飛び入り参加してくれることもあります。
最近はタイムを短縮したい、目標を持って走りたいという方向けにランニングクラブというクラブ活動も始めました。
ーイベントを行うことで、お客様同士の交流もできて良いですね。どのくらいの距離を走るのですか?
グループランは初心者の方も多いので、5キロくらいをゆっくり走ります。大仏などの観光名所も通るので、みんなで写真も撮りますよ。
イベントも商品同様ランニングだけに限っていないので、酒屋さんとコラボしたクラフトビールを飲むだけの会を開いたこともあります。
ーお客さんや他のお店との交流も大切にしていることが伝わってきます。
お客様との会話に出た企画は、基本的に実行しようと思っています。そこから新たな出会いにも繋がるので「やらない方がもったいない」と思うんですよね。いつでもウェルカムの精神です。そんなノリで大会を開催したのはかなり大変でしたが(笑)。
ー大会まで開催したんですね。
スキー場を貸し切って、下から一番上まで上るという大会を開催したら、たくさんの人が集まってくださって。日本代表選手まで参加する大規模なイベントになりました。
ーすごい規模です……!
今年の4月にお店を移転したのですが、イベントの開催はお店を移転した理由にも紐づいていて。以前は周りに飲食店などが何もない路面店だったのですが、異業種の方と関わることが増えたことで、人が集える場所が大事だなと思うようになったんです。
今は明治や大正時代に建てられた蔵の複合施設にお店を構えることで、人が集まれるスペースを用意できるようになりました。観光施設や駐車場もあるので、以前よりも人が来やすい場所になったと思いますね。
ーランニングショップといえど、みなさんがラフに楽しんでいる様子を聞いて、新しいランニングショップの在り方を知ることができました。最後に今後の展望を聞かせてください。
お店をオープンして3ヶ月後に、コロナ禍になってしまったので当初はどうなるのだろうと思っていました。この2年は修練の時間でしたが、その結果が今出てきているのかなと。
お店も移転して人も集まるようになって、自分でも想像してなかったほど良い方向に向かっていけてると感じます。
ランニングを始めるのにハードルを上げ過ぎず、気軽にランニングを楽しんでもらえたらという意味で「はじめは化繊じゃなくてもコットンTシャツを着て走ってもいいじゃないか」と思っているんです。
ランニングショップとしてウェアを販売しているので押さえるところは押さえつつ、さまざまな人がランニングをはじめられるきっかけとなるような、間口の広さは持っておきたいと思っています。
インタビューを終えて
ランニングショップと聞くとプロの方や熟練ランナーが集まるのかと思いきや、藤森さんもお客様も、経験の有無に関係なくランニングを気軽に楽しんでいることが伝わってきました。
また商品もイベントもランニングに拘らずさまざまなジャンルを取り入れることで、新たな出会いが生まれていくのもとても素敵な循環だと感じます。富山に足を運んだ際には、ぜひお店を訪れてみようと思いました。
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933-0914 富山県高岡市小馬出町6 山町ヴァレー四ノ蔵
※JR高岡駅から徒歩12分
山町ヴァレー専用駐車場有
観光の方は隣の山町筋観光駐車場もご利用いただけます。
ライター:伊藤 美咲
2019年にフリーライターとして独立し、現在はインタビュー記事、地方取材記事、イベントレポート、コラム執筆のほか、プレスリリースやSNS投稿の作成を手がける。ジャンルはビジネス、音楽、旅行、食などあらゆる領域を担当。https://www.foriio.com/misaki2018jp
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